葉留佳ルート・~沈黙な雨~

 2009//09
エロゲーギャルゲーレビューも楽じゃない

メルですよ

前回の続き
父親違いの双子姉妹の事情
幼少より、どちらかが劣っているか比較され育てられてきた双子の姉妹
出来の悪い方は蔑まなければならない
そういう環境で育ってきた二人は、いつしかお互いを憎み合うようになってた。



僕らは三枝家へと向かった。
葉留佳の母「ねぇ、葉留佳?今晩もつきあってくれてありがとう」
葉留佳「………」
葉留佳の母「おかわりはどうですか?」
理樹「いただきます…」
葉留佳の父「どんどん食べていいからね」
理樹「ありがとうございます…」


僕は箸でご飯を口に運んだ。
前のとき同様、よく味がわからなかった。

葉留佳の母「そういえば葉留佳、最近学園のほうはどう?」
葉留佳の父「テストが終わっても気を抜くんじゃないぞ」
葉留佳の母「そうそう、お父さんの言うとおりよ。頑張ってね、葉留佳」
葉留佳の父「予習復習もしっかりやるんだぞ」
葉留佳「………」


葉留佳さんは無言だった。

葉留佳の母「お友達とは上手くやってる?」
葉留佳の父「寮の隣部屋の子に迷惑掛けるんじゃないぞ」
葉留佳の母「大丈夫よ、葉留佳なら。ねぇ葉留佳?」
葉留佳「………」
葉留佳の父「そうか、ならいいんだが」




目の前に座っている大人二人は、箸をおいて黙った。

葉留佳「楽しいの?ねぇ、こんなことしてて、まんぞく?」
葉留佳「お山の家(さいぐさのいえ)では食事のときは静かにしなさいって教わったよ」
葉留佳「私がね、くちをひらこうとするとね、スプーンであたま、叩かれるんだよ」
葉留佳「おもいっきり何度もね、叩くんだよ。いたいっていってもいけないの」
葉留佳「いったらね、どんどん回数ふえるからね、だからね黙ってたべないといけないの」
葉留佳「…ねぇ、楽しい?楽しい?」

葉留佳の母「楽しいわよ、葉留佳」
葉留佳の父「あぁ、楽しんでる…私たちは、楽しんでる」


葉留佳さんは右手に持っていた茶碗をいきなり壁に投げ付けた。
がしゃん!
がたん、と椅子から立ち上がった葉留佳さんはテーブルクロスを引っ張った。
ガシャガシャ!
食器も、グラスも、調味料も、花瓶も散乱する。

葉留佳「楽しい!?楽しいの!?」
葉留佳「これが?こんなのが?これのどこが!?」

理樹「葉留佳さん…」
葉留佳「こんなの、私、楽しくない!」
理樹「葉留佳さんってば!」
葉留佳「帰る!私、こんなとこ、いたくない!」
理樹「………」
葉留佳の母「どこへ帰るの?葉留佳」


葉留佳さんのお母さんの呟くような問いかけ。

葉留佳「それ…は…」
葉留佳「…そんなの…それは…」


言葉に詰まった葉留佳さんは唇を噛みしめている。

葉留佳の母「…少なくとも…わたしは、あなたを叩いたりしない」
葉留佳「関係ないじゃんっ!放っておいてよ!」


がたん。
葉留佳さんは椅子を蹴倒すと、ダイニングルームを出て行った。
慌てて後を追う。
ばたん!ドアの音。

理樹「(外…!?)」

あたりをぐるっと回ってみても、葉留佳さんはみつからなかった。

理樹「両親がいる生活って…食卓ってああいうものなのかな」

道ばたで僕は呟いた。

葉留佳の母「葉留佳は見つかった?」
理樹「いえ、見つかりませんでした」


声に振り返ると、葉留佳さんの両親が立っていた。

葉留佳の母「…ごめんなさいね」
理樹「どうして謝るんですか」
葉留佳の母「私たちも、あの子にどうしてあげたらいいのか、わからないの」
葉留佳の父「あの子が恨むのも当然だ」
葉留佳の父「私たちは、あの子を助けにいってやれなかった」


──ひどい話だった。本当に、ひどい話だった。
誰だ、こんな状況を作ったのは。
誰なんだ。

理樹「…葉留佳さんが…その…もうひとりの父親と、あなたの娘だということは本当なんですか?」
葉留佳の父「………」


目の前の大人二人は答えなかった。

理樹「葉留佳さんも知らないみたいです。どうして教えてあげないんですか?」
葉留佳の父「君に、それを話すことは、出来ない」
理樹「なぜです」
葉留佳の父「…それは『私たち』の問題だからだ」
葉留佳の父「勝手な言いぐさだと思うだろう」
葉留佳の母「私も、そう思う」
理樹「なら、話してあげてもいいじゃないですか」
理樹「…葉留佳さんはあなたの娘ですか?」

葉留佳の父「言えない」
理樹「…葉留佳さんはあなたの娘ではないのですか?」
葉留佳の父「言えない」
理樹「どうして!葉留佳さんはあなたたちの子供じゃないんですか!」
理樹「あなたなら、全て証明できるはずじゃないですか!DNA鑑定でも、何でも!」
理樹「…父親のあなたなら…」

葉留佳の父「私の口からは…何も言えない」


…父親は頑なだった。

理樹「葉留佳さんは、あなたたちの子供じゃないんですか…」

怒りとも失望ともわからない声が、僕の口から漏れた。

葉留佳の母「私の娘よ」
理樹「…だったらなぜ…なぜなんです!」
葉留佳の母「娘だから、言えないのよ」
葉留佳の母「言えないの…」


大人たちは俯いた。



理樹「え?調べるって、何を?」

唐突過ぎて話が見えない。

葉留佳「私が『どっち』なのかを」
葉留佳「今まで、そう言われてきたけど」
葉留佳「私、証拠見せられたことない」
葉留佳「だから、調べようと思うの」
葉留佳「知らないまま、このままでいるなんて…もう、耐えられない」
葉留佳「私が『ハズレ』だったのかどうか、知りたい」

理樹「でも、葉留佳さん…もしも…」


もしも、自分が『ハズレ』だったらどうするのか?

葉留佳「…それならそれでいい。諦め、つくもん…」

それから暫くして、理樹と葉留佳は二人で調査する事となったが
これといった手がかりは見つからず、途方に暮れていた。



葉留佳さんと今後について話し合うため待ち合わせをしていたのだ。

理樹「(…結局、誰も本当のことを話すつもりがないんだ)」

ふたりの父親も、ひとりの母親も、二木さんも。
葉留佳さんも胸のうちすべてを語っていない気がする。

理樹「(僕は葉留佳さんを助ける立場に酔いたいだけなのかもしれない)」

そんな考えが浮かぶ。
『誰かを誰かが救う』という言葉には傲慢な響きがある。
二木さんが指摘したとおりに。

理樹「(それでも…それでも、僕は誰かの助けになりたいんだ)」

僕が遠い昔、助けてもらったように。
誰かが苦しんでいるのであれば、僕はその誰かの力になってあげたかった。

そして、葉留佳が到着するのだが
普段の葉留佳とは何か異なっていた。



理樹「…調査のこと?」
葉留佳「うん。親たちが教えてくれないんじゃどうしようもないよ…」


確かに、親たちが非協力的では僕らには打つ手なしだった。

葉留佳「止める、って言ったら軽蔑する?」

僕の隣に座った葉留佳さんは俯いたままだった。

理樹「…え…?」
葉留佳「考えてみればね」
葉留佳「私が三枝晶の子供じゃなかったから、あいつがそうだってことになるんだよね」
葉留佳「つまり…私が今度はあいつを追い詰めちゃうことになる」
葉留佳「そんなことになったら、私…どうしたらいいか、わかんない…」
葉留佳「今度はあいつが私とおんなじ目にあうなんて、考えると…」
葉留佳「だって、結局それはマイナスを押しつけ合っているだけだと思うんだ」
葉留佳「そんなの、誰も幸せになれないと、思う…」
葉留佳「だからもう止めた方がいいと思うんだ」


葉留佳さんは顔を上げて微笑んだ。

葉留佳「どっちがいいと思う?」

その問いに、僕はどう答えるべきか迷った。
ここで、諦めていいのかな…?
もう、諦めたほうがいいのかな…?

理樹「…諦めない」
葉留佳「え、どうして?」


違和感のある問い。
それは、もしかしたら。

理樹「葉留佳さん、どういう心変わり?」
葉留佳「どういうって?」
理樹「あんなに二木さんを罵ってたのに」
理樹「そんないきなり達観したようなことを言って」

葉留佳「………」

理樹「…きみは、誰だ?」

葉留佳「遅れてごめん、理樹く…」


僕は振り返った。
葉留佳さんだ。



??「………」
葉留佳「だ、誰?」
??「……」


目の前の女の子から笑みが消える。

理樹「…二木さん…か?」
??「……」


『彼女』は答えない。

葉留佳「理樹くん…これ、ど、どういうこと?」
理樹「…なんでこんなことを」
??「……」
理樹「…きみは…どうしてこんなことを!」
葉留佳「ねぇ…」
理樹「何をしているのかきみはわかってるのか?」
??「……」
葉留佳「…ねぇ説明してよ」
理樹「こんなことをなぜ」
葉留佳「ねぇってばっ、理樹くんっ!」
理樹「…葉留佳さん…」
葉留佳「どうしたの?どうして…私と同じかっこうを…してるの?」
??「……」


ベンチに近寄ってきた葉留佳さんは呆然と呟いた。

葉留佳「…うそ…どうして…」
葉留佳「…シフォン、ケーキ?」
葉留佳「嘘」
葉留佳「嘘だ」
葉留佳「うそだ…うそだ…こんなの、認めないっ!」


ベンチの上にあったシフォンケーキやジャムを手で払い落とした。
葉留佳さんはハサミを握ってぶるぶると震えている。

理樹「は、葉留佳さん…、葉留佳さん?」
葉留佳「…だって、だって…っ」
??「……」


無言のまま、『彼女』は身を翻した。
呆然と見送る僕の視界に『彼女』を追う葉留佳さんが見えた。

理樹「葉留佳さんっ!」

僕も追いかける。
晴れていたはずの中庭に、急に影が差す。
…光が遮られるよりも早く、雨が降り出した。
次第に暗くなっていく空の下、ふたりの葉留佳さんを追う。






つづく

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