MERUNNAD -メルナド-<再編集版>

カテゴリ: 自作小説
 2010//29
いつぞや書いた、メル的妄想シミュレーションの再編集版でござる







─12月23日
─古河家



オッサン「でだ、小僧。明日は12月24日、12月24日といえば!」

俺、メルは古河家の渚抜きの家族会議に参加していた
何の会議なのか大方検討付いてるが

俺「ロンリーな野郎たちが、寒いそして淋しい夜を過ごす日です」

と俺は冗談でそう答えた

オッサン「そうそう、全国4千万人のロンリーガイたちが寒くて淋しい夜を送る日で、暖めて欲し…ってバカか!てめぇ!」

さすがオッサン…
ノリツッコミで返すとは、期待を裏切らない

早苗さん「あの…、ロンリーガイとは何でしょうか?」

さっきまで黙っていた早苗さんがキョトンとした顔で訊ねる

オッサン「……」

さあ、どう返す?オッサン

早苗さん「…?」

俺「…」


オッサン「…禁則事項です☆」


早苗さん「???」

俺「……」

オッサン「………」

唖然
哀れなり、オッサン…
悲しくなってくる…





─10分後





オッサン「でだ、小僧。明日は12月24日、12月24日といえば…」

またそっからかよ
なに?またボケろと?
そう期待してないか?この人

俺「ロン…

答えようとした瞬間、早苗さんがそれを遮って口を開く

早苗さん「あの~、ロンリーガイって何でしょうか?」

俺「……」

オッサン「…………」

張りつめた空気が漂う
出番だ!とオッサンに相槌をする

オッサン「………」

早苗さん「????」

俺「…」

さあ、どう出る?オッサン


オッサン「あなたは知りすぎた…」


俺「………」

早苗さん「………………」

唖然
しかし10分前とは違う空気が漂っていた

ぐすん


早苗さん「私は…私は…、知ってはいけない事を知ってしまいましたのねーっ…!」


早苗さん、退場
そして…


オッサン「俺は…大好きだァァァァァァー…!!」(大量のパンを口に加えながら)


また一人、退場者が

俺「……はぁ」

俺のため息は虚しく寒空に消えていった

30分後、何事も無かったかのように会議は続行し
どうやらサプライズバースデーをやるから、渚には内緒にして欲しいそうだ





─当日





俺はある事情により、予定されていた時間に遅れてしまった
サプライズバースデーの予定時刻は、20時からだった

俺「(サプライズバースデーってより、ちょっとした晩餐だよな…)」

そんな事を思いつつ、腕時計に目をやる
現在の時刻は23:43

俺「(あとちょっとで日付が変わってしまう…)」

そうなってしまえば、渚の誕生日では無くなってしまう
なんとしても渚の誕生日を祝いたい

俺「渚…」

駆け足で古河家へと向かう
ふとある事に気付く

俺「雪…か」

空を仰ぐと、厚い雲に覆われているのが解る
その空から降ってくる銀の結晶
それは黒く染まった空を塗りつぶすかのように降り注いでた

俺「と、急がないと」

止めてた足を再び動かす
寒かった、足取りが重かった
そして、俺の心は曇っていた
迷いと不安
この2つが二重螺旋となり、俺の心を曇らせていた

俺「ん?あれは…」

杏「メル…」

そこには、杏・藤林・春原・ことみ・宮沢・智代・芳野さん・公子さん・美佐枝さんが居た
皆も渚の誕生会に呼ばれてた
そして恐らく、誕生会から帰ってる途中だ
つまり

俺「そうか…もう終わってたのか」

間に合わなかったということだ
失望感に襲われ踵を返し、後に引き返そうとする俺

春原「メル!!」

春原が俺の名前を叫ぶ
渚同様、こいつらも俺の事怒ってるだろうな…
だから俺は振り返ろうとはしなかった
俯いたままその場に立ち止まる
怖かった
逃げ出したかった
しかし…

春原「お前を待っている」

俺「…!」

杏「渚が待ってるわよ」

藤林「渚ちゃんが待ってます」

ことみ「渚ちゃんが待ってるの」

宮沢「渚さんが待ってますよ」

智代「古河が待ってるぞ」

芳野さん「彼女はお前を待っている」

公子さん「渚ちゃんが待っています」

美佐枝さん「古河さんが待ってるわ」

春原に続き、彼女等まで

春原「だから逃げるな、メル」

杏「早く行ってやりなさい」

振り返る俺
そして伏せていた顔をゆっくり持ち上げた
そこには微笑む皆がいた
曇っていた心に光が差し込んだ
さっきまで降っていた雪も止んだ

俺「皆…ありがとう!」

そう言い残し
俺は再び古河家へ向かった
それ以上の言葉はいらない、彼らもきっと解ってくれるだろう
先ほどとは違い、足取りが軽かった
俺は全力で走った
しかし

俺「ぐっ!」

走ってたせいか足を滑らせ勢いよく転倒する
幸い、積もってた雪がクッション代わりになったおかげで
顔と服が多少汚れた程度で済んだ

俺「あ…れ」

ふとある異変に気付く
ポケットに手を入れ確認するも
やはり無い
渚に渡すはずのプレゼントが無い
転倒したときに落としたのだろうか
周りを見渡してもどこにも無い

俺「どこだッ」

刻々と時間が迫っていく中
俺は必死に探し続けた
手袋を外し、地面に積もった雪の中を探し続けた
やがて指が悴み始め、そこから血が滲む
それでも俺は探し続けた

俺「ん、雪…?」

また雪が降り始めたのだろうか
白い粒のようなものが顔を掠っていった
天を見上げる
しかし雪は降っていない
また白い粒が見えた
その粒を手の平に受け止める

俺「これは…?」

それは雪ではなかった
それは粉雪とは違い、優しくて暖かかった
それはまるで…

俺「光の玉…?」

『メルさん』

どこからか声がした
その声には聞き覚えがある
姉のために、校内を駆け回っていた
風のような少女

俺「風子…なのか?」

いくつかの思い出が頭を過ぎる
姉を祝った後に消えた筈の彼女が
俺の前に居る…
風子に関する記憶は消えていたが、こうして彼女を見て
消えていた記憶も蘇る

風子「メルさん。風子のこと思い出してくれて嬉しいです」

俺「あぁ。久しぶり…かな?まさかお前にまた逢えるとは思ってもみなかったけど」

風子「嬉しくなかったですか?」

俺「んや、嬉しいよ。ちょっと驚いたけど」

風子「そうですか。メルさんが困っているようなので風子、参上しました。」

風子「しかし風子には余り時間が残されていません、光の玉のちからを借りているだけなので」


俺「そうだったのか。それはそれで寂しいな」

風子「メルさんの探し物、これ…」

そう言って俺に手を差し伸べる風子

俺「これは…渚のプレゼント」

俺もまた風子に手を差し伸ばしそれを受け取る

俺「ありがとう風子。恩に着るよ」

風子「当然です。感謝してもし足りないぐらいです」

俺「ったく、相変わらず素直じゃない奴。なんなら、お礼にキスでもしてあげようか?」

と冗談交じりにそう言う

風子「風子はもうそんな子供じゃありません!メルさんと一緒にしないで下さい!」

不貞腐れる風子
その姿は何とも微笑ましい

風子「でも、その気持ちだけでも嬉しいです。…渚さんに怒られますが。」

風子「メルさん、忘れないで下さい。メルさんと渚さんとの幸せは風子のしあわせです

そう言って、風子の姿はもうそこに無かった

俺「あっ…。あれ?いつの間にプレゼントが俺の手に…?」

なんかとっても大事な事を忘れている気がする
少し哀しく、そして切ない
そのプレゼントを2度と失くさない様強く握った

俺「渡さなければ…渚に、このペンダントを…」

ゆっくりと立ち上がり
ひた走る、ただ走る

そう、“あの頃”とは違う。

走ってる最中
ふと、渚と始めて出会ったあの日の出来事が頭を過ぎる





「はぁ」

ため息と共に空を仰ぐ。
その先に校門はあった。

誰が好んで、あんな場所に校門を据えたのか。
長い坂道が、悪夢のように延びていた。

「はぁ…」

別のため息。俺のよりかは小さく、短かかった。
隣を見てみる。






そこに同じように立ち尽くす女の子がいた。
同じ三年生。けど、見慣れない顔だった。
短い髪が、肩のすぐ上で風にそよいでいる。



「あんぱんっ」

「この学校は、好きですか」

「わたしはとってもとっても好きです。
でも、なにもかも…変わらずにはいられないです。」


俺に訊いているのではなかった。
多分、心の中の誰かに語りかけているのだろう。

「楽しい事とか、嬉しい事とか、全部。
…全部、変わらずにはいられないです」


たどたどしく、ひとり言を続ける。

「それでも、この場所が好きでいられますか」




『見つければいいだろ』



「えっ…?」

驚いて、俺の顔を見る。

「次の楽しい事とか、嬉しい事を見つければいいだけだろ?」

そう。
何も知らなかった無垢な頃
誰にでもある。

「ほら、行こうぜ」



俺たちは登り始める。


長い、長い坂道を。





“あの頃”の俺は冷めていた
全てに対し。
景色が、何もかも灰色に見えてた
家も、友達も、学校も。
学校へ行く度に、あの坂で足を止めては立ち往生した。
しかし、坂の上で
あの少女と出会ってから、灰色だった景色が彩った。
坂の上の少女は、いつも自分に自信がなくて
か弱くて、人見知りが激しくて、泣き虫で、真っ直ぐで、懸命で、内なる強さを秘めていた。
そんな少女を支え、引っ張って行ったのは一人の少年。





始まりの坂(http://www.nicovideo.jp/watch/sm2921978

作詞・編曲:riya(eufonius)
作曲:麻枝准
唄:riya

「ひとりきりペダルこいでた」
「僕はどんな日常を目指した」
「何度も転んで人は強くなれると言う」
「そんなことはなくて」
「そんなことはなくて」
「足を止めて」
「ここから見てた」
「遠いあの頃」

「ふたりだったら行けた 行けたと思う」
「どんな坂でも登れたと思う」

「足を止めて」
「ここから見てた」
「時計も買った」
「最後に巻いて」
「思い出してたんだ」
「時は流れて」

「君とだったら行けた 行けたと思う」
「どんな坂でも登ってみせる」
「君とがよかった 君がよかった」
「君を見てるから 君と似てるから」
「若草の匂いがした いつもの通りに生えてた」
「踏まれていく」
「踏まれていく」
「人は何も振り返らず」





数々の出来事
数々の思い出
渚と過ごした日々が頭を過ぎっていた
現実に帰るとそこは古河家前
そこには身に覚えのある、数時間来ると信じずっと待ち続けてた人の背中が見えた
その背中は小さかったけど、何かと一生懸命だった

俺「渚」

そっと優しく抱きしめる
その小さな逞しい背中を

渚「あっメル君」

俺「雪積もってるな」

髪に積もった雪を拭う

渚「ずっと待ってましたから」

俺「…渚、ごめんな。遅れて」

冷えきったその小さい身体にコートをかけてあげる

渚「それでもメル君は、来てくれました。」

俺「あぁ、俺遅れたけど。ちゃんと間に合ったよな?」

渚「はい、来ると信じてました」

俺「そうか…。渚、誕生日おめでとう」

渚「えへへ…ありがとうございます」


─そして聖夜の鈴が鳴る
─時刻は0:00



渚「あ、クリスマスです」

俺「そうだ、メリークリスマス。渚」

そう言い、ずっと握り締めてたプレゼントを渚に渡す

渚「ペンダントですか?」

それは写真の付いた金属製のペンダント、いわゆるロケットペンダントというやつだ
パカっとケースを開くと

渚「わー。メル君とわたしとふぅちゃんと3人で撮った写真です」

俺「あぁ。」

…ん?
ふぅちゃん…?
ふぅちゃんと言ったのか、渚は

俺「渚、ちょっとその写真を見せてみろ」

渚「え?あ、はい」

渚が手にしていたペンダントを見せてもらう

俺「これは…」

風…子

俺と渚と風子が写ったプリクラだった
今思い出した
以前に女子生徒がプリクラを撮っているのを
ただ物寂しそうにそれを見つめていた少女の事を。

俺「そうか…。風子…うっ…くっ……」

無意識のうちに、涙が頬を伝う

渚「メル君?どうしたんですか…?泣いてますよ…?」

渚が心配そうな顔をして見つめてくる

俺「あぁ、いや…何でもない。…何でもないんだ」

袖で涙を拭き払う

渚「メル君」

俺「…渚?」

渚はそっと俺の頬に手を伸ばし
ペンダントが握られていた俺の手に自分の手を重ねた

渚「メル君のプレゼント、とても強い想いが込められています」

俺「え、そんなこと分かるのか?」

渚「はい、暖かくて優しくてそして強い想いが伝わってきます」

俺「あぁ、それにあいつの…、風子の願いが込められているんだ…」

渚「逢ったんですね、ふぅちゃんに」

俺「ほんの少しだけの間だけどな。公子さんの結婚式以来、あいつが消えてから
あいつの事をすっかり忘れていて思い出すことはなかったけど、ここに来る途中でペンダントを落として、それをあいつは見つけてくれたんだ」


渚「そうだったんですか、ふぅちゃんの想いも、願いも込められたペンダントですね」

俺「あぁ。あいつは、風子は俺ら2人の幸せを願っていた、その想いを俺らはこの先も大事にしなければならない
ずっと病院で眠り続けている、風子の為にも。」


渚「そうですね。わたしとメル君の幸せは、ふぅちゃんの幸せですね」

俺と渚は冬空の下で抱き合った
俺らの手にはペンダントが握られていた


そう、これは俺と渚の物語
これからもずっと紡いでいく2人の物語。










渚「そうだ、メル君」

俺「ん?」

渚「メリークリスマスです」

そう言って、渚は店内からやや大きめのプレゼントを取り出してきた

俺「お、ありがとうな。大きいな、開けてもいいか?」

渚「はい」

俺は大きめのプレゼントの包装紙を丁寧に開けた
大きめのプレゼントの正体が見えてきた
ちょっとフサフサしていて、柔からない…

俺「これは…」


渚「だんご大家族!」


ズコーッ

だんご大家族のぬいぐるみだった
にしても、この色は…


渚「レインボーカラーです!数量限定特産品です!」


ズコーー!

俺「ははは…、あれか、レインボーだんご大家族ってか?」


渚「『おまえに』だそうです」


ズコー!

俺「意味わかんねぇよ!」

思わずツッコミを入れてしまう

俺「まぁなんだ、ありがとう」

渚「はい。
それであ、あの…」


モゾモゾ…

俺「ん?どうしたんだ」

渚「実は……プレゼントがもう一つあるんです…!」

モゾモゾ…

俺「そうなの?」

渚「目…閉じてもらえますか?」

俺「お、おう…」

目を瞑る俺
そして、俺の唇に渚の唇が触れる感触
思わず俺は目を開いてしまう
その唇は柔らかくて、ほんのりいい香りがして、気持ちいい感触が伝わってきて…
俺はまた目を閉じてしまう


『だーっ!てめぇ!そこまで許した覚えはねぇぞ!!』


俺&渚「「えっっ!?」」

そこには覗き見してた、オッサンと早苗さんがいた

早苗さん「秋生さんダメでしょ…せっかくいいところだったんだから」

オッサン「許さないもんは許さん!」

どこからか金属バットを取り出し、振り回す狂人のようだ

俺「落ち着けよ、オッサン」

オッサン「俺を秋生様と呼べぇぇぇ!」

金属バットを振り回して追っかけてくるオッサン

早苗さん「もう、秋生さんったら」

渚「走ると危ないですよー」

オッサン「待ちやがれ!小僧!」

俺「捕まえられるもんなら捕まえてみやがれ!」

渚と早苗さんもそれに加え、大騒ぎになっていた

俺「…近所迷惑にも程がある、まあいいか」



TRUE END





CAST
 メル
 古河渚

オッサン 古河秋生
早苗さん 古河早苗

      藤林杏
藤林    藤林涼
春原    春原陽平
ことみ   一ノ瀬ことみ
宮沢    宮沢有紀寧
智代    坂上智代
芳野さん  芳野祐介
公子さん  伊吹公子
美佐枝さん 相楽美佐枝
風子     伊吹風子





~あとがき~
12月24日はCLANNADの渚の誕生日ということで、渚の誕生日を祝うべく
勢いで書いたのが、メル的妄想シミュレーション「MERUNNAD -メルナド-」です。
そしてあれから、2年
編集と追加台詞を加え、出来上がったのがコレ。
思えば、昨年の12月上旬から書き始めたわけであるが
途中から意欲が低下し、24日が迫る一方で
書く時間もなく、結果投げ出しました。
で、今年のクリスマスを迎え、途中で投げ出した事を思い出し
今日になって6時間ぐらい費やし、やっと完成させた。
一応、今回は見易くなるよう各キャラの台詞を色別にしました
筈が、キャラのイメージカラーに合わせた結果、かえって見辛くなった気がしないでもない…
反転すればちょっとはマシになる、多分。

遅れたけど、渚、ハッピーバースデー

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